File:09
会議はそのまま解散となった。
しかし、ミックはクレアに呼ばれて『保管庫』 などと言うところに来ていた。
部屋に入ってみると、小さなロッカーがあるだけの無機質な部屋。
ロッカーには部隊一人一人の名前が刻まれていて、 クレアはその内ミックの場所から何かを取り出した。
「はい、これ」
そういってミックの手の上に置かれたものは、 1辺が5センチメートルほどの黒い立方体だった。
ズボンにぶら下げるためのフックとチェーンもついている。
「これは?……」
「魔法補助用に作られた永久エネルギー機関です」
「これが?」
これほど小さなものを見るのは、彼にとって初めてだった。
どこの研究機関にも、 安全性を考慮して何十ものセーフティーがかかった巨大なものばか りだ。
「これが実物なんです。それと、 現状この建物の外へ持ち出すことは禁止されているので、 帰るときは必ずここに戻してくださいね!」
「わかった」
「あと、このロッカーにはパスワードが――」
†
クレアの話が終わって保管庫を出ると、 男性が一人ドアの前で待っていた。
「あ、隊長さん。やっと出てきましたね」
気さくにミックに声をかけてくる。
「ビルコ・トライアムさん、だっけ?」
「そうです。僕もクレアさんと同じくメカニックやってます」
ビルコはクレアの方に少し目線をやる。
「あの…… 私、先に帰るから!」
そういって、クレアは廊下を駆けていった。
「なんというか…… 避けられてるんですかねぇ、僕。毎回あんな調子です……」
大きなため息をついて、うなだれる。
「……それで、ビルコさん。何か、僕に用でも?」
「そうそう! ちょっと調べさせて欲しいんです」
「え? 何を?」
「体の色々なところのサイズを。 判りやすく言えば身体測定ですね。3Dスキャンをしちゃうんで、 すぐ終わりますよ」
「ふぅん……」
「隊長さんに合うピッタリとしたプロテクトスーツを作らなきゃいけないんで……」
「なるほど」
「あと…… “さん”なんか付けないで気軽に『ビルコ』と呼んで下さい!」
「じゃあ、僕のことも『隊長』なんかじゃなくて名前で――」
「だめです。上司なんですから『隊長さん』 と呼ばせてもらいます」
ミックの提案はすぐさま却下された。
「隊長さん、こんなこと話してないでさっさと行きましょうか」
†
4日後。
12月15日夕方。
ミックとエレーヌは、いつも通り2階で魔法の練習をしていた。
そこに、ロマが息を荒くしながら階段を駆け上がってくる。
「ロマ、なんですの?」
「大臣から伝令です。“ 明後日決行の作戦についてブリーフィングを行う。 魔導第0部隊所属員は、直ちに会議室に集合せよ”」
「ついに、始まりますのね」
「後は私たちだけです。早く行きましょう!!」
3人は駆け足で階段を下りていった。
FILE:09 FIN
TO BE CONTINUED BY FILE:10.
2011/04/13
WRITTEN BY yassyro.